認知症とは

認知症

脳の機能障害(記憶障害 等)が何らかの原因によって起き、それが持続的に進行することで日常生活にも支障をきたしている状態が認知症です。

なお認知症は、中核症状とそれに伴ってみられる周辺症状がみられるようになります。中核症状とは、記憶障害(主にもの忘れ)をはじめ、見当識障害(時間や場所、他人と自分の関係性を認識する能力)、実行機能障害(計画の立案、物を順序立てて行う能力)、失語・失認・失行(言葉が理解できない、目の前で見えているものが何かわからない、日常の簡単動作ができない)のことを言います。また周辺症状とは、中核症状によって引き起こされる症状になります。具体的には、妄想(ものとられ妄想)、抑うつ、徘徊、性格の変化、幻覚、不眠などです。

もの忘れとの違い

認知症によく似た症状として、もの忘れがあります。人は誰でも年をとれば忘れっぽくなり、新しいことを覚えにくくなります。ただこれらは同じように見えても違います。具体的には、もの忘れは体験した一部のことを忘れているのに対して、認知症は体験したことそのものを忘れています。例えば、朝食に何を食べたかを思い出せないのがもの忘れ、朝食を食べたかどうかも忘れているのが認知症です。

もの忘れの特徴 脳内のデータベースからうまく情報を探し出せない状態です。加齢になるにつれて、それを繰り返しやすくなります。これによって、体験したことの一部を忘れるようになります。
認知症の特徴 脳内のデータベース自体に衰えがみられることで、体験したことも忘れてしまっている。

以下の症状に心当たりのある方は一度ご受診ください

  • もの忘れがひどい
  • 不安感が強く出ている
  • 性格が変化している
  • 理解力や判断力が衰えている
  • 意欲が全くみられない

など

検査について

認知症が疑われる場合、診断をつけるための検査として、神経心理学的検査が行われます。これは、知能検査・記憶検査・前頭葉機能検査・遂行機能検査などを組み合わせて実施するものです。また同居されているご家族の方のお話もお聞きし、その内容についても判断材料としていきます。

さらに脳が実際にどのような状態になっているか画像検査(CT、MRI等)で調べるなどして総合的に判断します。さらに認知症と診断された場合、どのタイプに当てはまるか、進行の程度なども判定していきます。

認知症の種類

認知症は、脳に何らかの病気が起きる、あるいは外傷等によって発症するようになります。その種類は70を超えるとも言われていますが、日本人の全認知症患者さまの9割程度を占めるのが、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症で、これを三大認知症と呼びます。それぞれの特徴は次の通りです。

アルツハイマー型認知症

日本人の全認知症患者さまの6~7割を占めています。異常とされるタンパク質(アミロイドβ)が脳内で蓄積していくのをきっかけとして、神経細胞が死滅して脱落、これによって脳が委縮していくことで発症します。初期症状ですが、主に記憶障害(もの忘れ)から始まります。なおアミロイドβ蓄積の原因は現時点で特定していませんが、遺伝的要因や加齢等によって、排出や分解がしにくくなるのではないかと言われています。

脳血管性認知症

脳血管が異常をきたすことで発症する認知症で、全認知症患者さまの2割程度を占めます。
主な原因は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害です。これらの病気は生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧 等)をきっかけにしたケースが多いです。この場合、狭窄、閉塞、出血等、障害を受けている血管の部位によって現れる症状が異なります。記憶障害、言語障害、見当識障害、歩行障害等がみられます。ただ障害を受けてない部位は正常なので、認知症の症状がまだら的に現れるようになります(1日の時間帯の中で、できることとできないことの差が激しくなる 等)。

レビー小体型認知症

レビー小体と呼ばれる特殊なタンパク質が脳の中で蓄積します。これが脳の神経細胞にダメージを与えるなどして減少し、それによって発症する認知症です。男性患者さまが多いのも特徴で、その数は女性の2倍程度です。
主な症状ですが、初期症状では認知機能に異常はみられにくく、パーキンソン症状(手足が震える 等)、幻視・幻覚・妄想、睡眠時の異常行動(寝ている最中に暴れる、大声を出す 等)、自律神経症状(立ちくらみ、動悸、失禁、失神 等)などが現れるようになります。

治療について

認知症のタイプによって治療法は異なりますが、いずれにしても完治することは現時点ではありません。

アルツハイマー型では、病状の進行を遅らせる治療と薬物療法(コリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬 等)を行います。また認知症の症状を抑えるための薬物療法として、精神安定剤(抗不安薬)を用いることもあります。このほかにもリクリエーションや運動療法も併せるようにします。

脳血管性型では、再び脳血管障害を発症すれば、さらに認知症の症状を悪化させてしまうので、動脈硬化を促進させる生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧症 等)の治療と禁煙を行っていきます。

レビー正体型は、アルツハイマー型の患者さまと同様の治療内容となりますが、パーキンソン症状もみられる場合は、そのための治療(抗パーキンソン病薬)も用いられます。